- 主軸と第2軸の「分割数(目盛り線の数)」を計算して手動で統一する: Excelの自動設定に頼らず、最大値を目盛り間隔(主単位)で割った値が左右の軸で同じ数(例:5本や10本)になるよう数値を直接入力し、グリッド線を一本に重ねます。
- 正負が混在する場合は「最大値と最小値の比率」を左右の軸で一致させる: 0のラインを揃えるために、「最大値÷最小値」の結果が主軸と第2軸で同じ比率になるよう境界値を算出・設定することで、視覚的な誤解を招く0線のズレを解消します。
- 「軸の書式設定」で境界値と主単位の「自動」を解除し数値を固定する: データが更新されるたびにExcelが目盛りを再計算してズレるのを防ぐため、算出した数値を明示的に入力して固定し、常に整ったグラフ表示を維持します。
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目次
1. 第2軸の目盛りがズレる技術的な理由と視覚的な弊害
Excelで「売上(金額)」と「利益率(%)」など、単位の異なるデータを一つのグラフに表示する際、便利なのが「第2軸」です。しかし、標準設定のままでは、左側の主軸と右側の第2軸で目盛りの刻み(主単位)がバラバラになり、背景の横線(グリッド線)が二重に表示されたり、本来一致すべき0(ゼロ)のラインが上下にズレてしまったりすることが多々あります。
これはExcelの描画エンジンが、それぞれの軸に含まれるデータの最小値と最大値から、個別に「最も見栄えが良い」と判断した目盛りを自動生成するために起こります。しかし、データ分析の現場において目盛りのズレは、数値の相関関係を読み解く際のノイズとなり、時には誤った意思決定を誘発するリスクすら孕んでいます。本稿では、この「自動設定」の限界を突破し、計算によって左右の軸を数学的に整合させる、誠実なグラフ作成の技術を詳説します。
2. 手順①:グリッド線を揃えるための「分割数」の算出
左右の目盛り線を一本に重ねるための絶対条件は、主軸と第2軸で「目盛りの区切り数」を同じにすることです。例えば、主軸を5分割にするなら、第2軸も必ず5分割に調整します。
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- 主軸(左側)のデータの最大値を確認します。例:最大売上が850,000円なら、切りよく「1,000,000」をグラフの最大値に設定することを目指します。
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- 分割数を決めます。視認性が良いのは「5」または「10」です。ここでは5分割とします。
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- 計算式:1,000,000 ÷ 5 = 200,000。これが主軸の「主単位」になります。
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- 同様に、第2軸(右側)の最大値を確認します。例:最大利益率が18%なら、最大値を「20%(0.2)」に設定します。
- 計算式:0.2 ÷ 5 = 0.04。これが第2軸の「主単位」になります。
3. 手順②:軸の書式設定での数値固定手順
計算した数値をExcelに反映させ、自動計算をオフにします。
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- グラフ上の「主軸(左側の数字)」を右クリックし、 「軸の書式設定」 を選択します。
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- 「軸のオプション」セクションで、 「境界値」の最大値に「1000000」 、 「単位」の主単位に「200000」 を入力します。入力後、項目の右側にある「リセット」ボタンが消え、設定が固定されたことを確認します。
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- 次にグラフ上の「第2軸(右側の数字)」をクリックします。
- 同様に、 「境界値」の最大値に「0.2」 、 「単位」の主単位に「0.04」 を入力します。
この操作により、左右どちらの軸も「0から始まって5本の線で最大値に達する」という構造が完成し、グリッド線が美しく一本に重なります。
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4. 手順③:応用編「0(ゼロ)のライン」を完全に一致させる計算術
利益がマイナスになるなど、データに負の数が含まれる場合はさらに難易度が上がります。0のラインを揃えるには、「最大値と最小値の比率」を左右で等しくする必要があります。
例えば、主軸の最大値が100、最小値が-20の場合、比率は 100 : 20 = 5 : 1 です。このとき第2軸の最大値を50にするなら、最小値は -10 に設定しなければ、0のラインは一致しません。
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- 計算の基本ロジック:
主軸の(最大値 ÷ 最小値) = 第2軸の(最大値 ÷ 最小値)
- 計算の基本ロジック:
- 実務での算出ステップ:
1. 主軸の最大値(M1)と最小値(m1)を決め、その比率 R = M1 / m1 を計算する。
2. 第2軸の最大値(M2)をデータの最大値より少し大きく設定する。
3. 第2軸の最小値(m2)を m2 = M2 / R で算出する。
4. 算出した数値をそれぞれの軸の境界値に入力する。
この比率維持の計算を誠実に実行することで、グラフの中央や下部にある「0」の水平線が左右で完全に重なり、ポジティブなデータとネガティブなデータの境界が極めて明確になります。
5. 運用上の注意:データ更新時の「目盛り突き抜け」対策
目盛りを手動で固定することの唯一の弱点は、将来的に設定した最大値を超えるデータが入力された際、グラフの棒や線が枠外に突き抜けてしまう(あるいは表示されない)点です。
これを防ぐためには、以下の運用ルールを設けることを推奨します。
-
- 余裕を持った最大値設定: 現在の最大値の1.2倍〜1.5倍程度を境界値として設定しておくことで、多少の数値変動には対応可能になります。
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- 定期的な再計算: 四半期に一度など、データのレンジが大きく変わるタイミングで目盛りの再設定を行うルーチンを構築します。
- VBAによる自動同期(高度な手法): マクロを使用して、データ更新時に自動的に最大値を算出し、比率を維持したまま軸を書き換えるコードを実装すれば、メンテナンスフリーな完璧なグラフが完成します。
6. 設定前(自動)と設定後(計算による固定)の比較
| 比較項目 | Excelの自動設定 | 計算による手動固定 |
|---|---|---|
| 背景のグリッド線 | 二重になり、網掛けのように見える。 | 一本に重なり、スッキリと見える。 |
| 0(ゼロ)の水平線 | 左右で高さがズレることが多い。 | 完全に一致し、正負の境が明確。 |
| データの読み取り | 左右の目盛りを交互に見る必要があり疲れる。 | 一つの横線を基準に双方の値を直感的に把握できる。 |
| メンテナンス | 不要(Excel任せ)。 | データの大きな変動時に再設定が必要。 |
まとめ:数理的な美しさがグラフの説得力を高める
Excelの第2軸目盛りのズレを直す作業は、単なる「見た目の微調整」ではありません。それは、提示するデータの信頼性を高め、読み手の認知負荷を最小限に抑えるための、極めて実務的な「おもてなし」の技術です。Excelの自動機能は優秀ですが、単位の異なる二つの世界を一つの図に押し込める際には、作成者の論理的な介入が不可欠となります。
分割数を揃え、比率を計算し、境界値を固定する。この一連の誠実なプロセスを経て作られたグラフは、誰が見ても一瞬でその意図が伝わる、強固な説得力を持つようになります。道具に使われるのではなく、道具の仕様を理解した上で自身の論理を反映させる。この姿勢こそが、Excelというツールを通じて価値あるアウトプットを生み出すための、真の専門性と言えるでしょう。今日から、第2軸を使う際は必ず「分割数」を意識し、一本のグリッド線が貫く美しいグラフ作成を心がけてください。
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