「汚名返上」と「汚名挽回」

言葉の源流とは?

日常会話やSNSなどで「汚名挽回」という表現を耳にすることが少なくありませんが、正確な表現は「汚名返上」です。

「汚名」という語は、文字通り「汚れた名前」を指し、一般的には「悪名」や「不名誉」を意味します。一方、二つ目の語、「返上」は「返す」という意味の「上」との組み合わせで、「手元にあるものを戻す」ことを指します。従って、「汚名返上」は文字通り「汚れた名前を戻す」、つまり「名誉を回復する」という意味になります。

なぜ誤用が広まったのか?

では、なぜ「汚名挽回」という誤用が広まったのでしょうか。その一因は、この言葉を構成する「挽回」という語の使い方にあります。「挽回」は元々、失ったものを取り戻す、あるいは損失を補うという意味合いを持ちます。したがって、「汚名挽回」という言葉には一見すると「名誉を取り戻す」という意味が含まれているように思えるのです。

しかし、「挽回」は通常、具体的な損失や失敗を指して用いられるものであり、「名誉」のような抽象的な概念を指すことは一般的ではありません。「返上」は名誉といった抽象的なものを「返す」ことも含んでいるため、「汚名返上」が正しい表現となるのです。