【解説】「全固体電池」とはなにか【2027年トヨタが電気自動車向けに実用化】

2023年6月13日、トヨタ自動車は電気自動車(EV)向けの次世代電池「全固体電池」を2027年にも実用化する方針を明らかにしました。
ここでは、電池寿命の短さを克服する新技術として大きな注目が集まる「全固体電池」について詳しく解説します。

目次

全固体電池とは何か

全固体電池とは、その名の通り、全てが固体で構成される電池のことを指します。従来の電池(液体電解質電池)とは異なり、電解質として固体を使用します。これにより、電池の安全性とエネルギー密度を大幅に向上させることが可能となります。

全固体電池の特徴

全固体電池の一番の特徴は、”安全性”にあります。液体電解質は熱に弱く、過熱状態になると爆発や発火のリスクが高まります。しかし、全固体電池では固体電解質を使用しているため、液体電解質がもつリスクを大幅に軽減します。さらに、電解質が固体であるため、電池が物理的にダメージを受けてもリークすることがありません。

全固体電池の種類と構造

全固体電池にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる材料で構成されています。代表的なものには、「硫化リチウム(LISICON)型」、「酸化物型」、「ポリマー型」などがあります。

硫化リチウム型全固体電池

硫化リチウム型全固体電池は、高いイオン伝導性を持つことが特徴で、このために高出力が可能となります。これらの電池は、一般的には、硫化リチウムを主成分とする固体電解質、金属リチウムやリチウム合金の陽極、および硫化物を主成分とする陰極から構成されます。

酸化物型全固体電池

酸化物型全固体電池は、主に電動車両や大型エネルギー貯蔵システム用途に利用されています。酸化物電解質は、通常の室温ではイオン伝導性が低いため、動作温度が比較的高いという特性があります。

ポリマー型全固体電池

ポリマー型全固体電池は、電解質としてポリマーを用いることで、安全性と柔軟性を両立しています。電子機器やウェアラブルデバイスへの応用が期待されています。

全固体電池の応用

全固体電池はその高いエネルギー密度と安全性から、電気自動車やエネルギー貯蔵、ポータブル電子機器など様々な領域での利用が期待されています。

電気自動車への応用

電気自動車(EV)では、ドライブレンジ(一回の充電で走行できる距離)と安全性が重要な要素となります。全固体電池はこれらを改善する可能性を秘めています。エネルギー密度が高いため、同じ重量のバッテリーでより長い距離を走行することが可能となります。また、火災リスクの軽減は、電気自動車の安全性向上に貢献します。

エネルギー貯蔵への応用

再生可能エネルギーの利用拡大に伴い、エネルギーの貯蔵技術は非常に重要なテーマとなっています。全固体電池はその高エネルギー密度と安全性から、大規模なエネルギー貯蔵システムにおける有力な選択肢となるでしょう。

ポータブル電子機器への応用

全固体電池の形状自由度の高さと安全性は、ウェアラブルデバイスやモバイルデバイスなどの小型電子機器における新たな可能性を切り開きます。これにより、より薄く、軽く、長持ちするデバイスの開発が進むでしょう。

全固体電池の課題と今後

全固体電池は非常に有望な技術でありながら、まだ実用化への道のりは長いとされています。主な課題としては、一般的に液体電解質よりも固体電解質のイオン伝導性が低いこと、また大量生産に向けた製造技術の確立などがあります。

イオン伝導性の課題

全固体電池の最大の課題は、固体電解質のイオン伝導性が低いことです。これは電池の性能、特に出力や充電速度に影響を与えます。多くの研究がこの問題の解決に向けて行われており、新しい固体電解質の開発や、既存の電解質の改良が進められています。

製造技術の課題

全固体電池のもう一つの大きな課題は、大量生産に適した製造技術の確立です。現在、いくつかの企業や研究機関が独自の製造技術を開発し、競争を繰り広げています。

人間の宇宙活動を推進する可能性も

全固体電池は、その高い安全性とエネルギー密度から、次世代の電池として大いに期待されています。しかし、イオン伝導性や製造技術といった課題を克服することが実用化へのカギとなります。

全固体電池の研究は宇宙開発とも密接に関連しています。全固体電池はその高いエネルギー密度と安全性から、宇宙船や衛星の電源としての応用が期待されています。また、地球上での実用化を見越した全固体電池の研究は、新たな探査機や人間の宇宙活動をさらに推進する可能性を秘めています。

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