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周囲の騒音をAIで遮断し、音声の明瞭度を担保する
Teamsでの会議中、キーボードの打鍵音やエアコンの動作音、あるいは予期せぬ周囲の雑音がマイクに乗ってしまうことは、円滑なコミュニケーションを妨げる大きな要因となります。Teamsには強力な「AIベースのノイズ抑制」機能が搭載されていますが、設定を有効にしているはずなのに雑音が消えない、あるいは自分の声まで途切れてしまうといったトラブルが散見されます。
本記事では、Teamsが音声を識別するアルゴリズムの仕組みから、ハードウェアのスペック不足による機能制限、そしてWindows側のマイク設定との競合を解消する手順までを詳説します。どんな環境下でも「声だけ」をクリアに届けるための、エンジニアリング視点に基づいた技術リファレンスとしてご活用ください。
結論:ノイズ抑制を最適化する3つのチェック項目
- 抑制レベルの個別指定:「設定」>「デバイス」から、抑制レベルを「自動」ではなく「高」に強制設定する。
- CPU負荷の確認:「高」設定はPCリソースを消費するため、古いPCや省電力モード時には機能が自動停止することを知る。
- Windows側「音響効果」の解除:ドライバ側のノイズキャンセル機能とTeamsのAIが干渉している場合、どちらかをオフにする。
目次
1. 技術仕様:Teamsが「ノイズ」と「声」を判別するロジック
Teamsのノイズ抑制は、事前に数千時間の音声データを学習させたディープニューラルネットワーク(DNN)を利用しています。このAIは、入力された音声波形から「人間の声の成分」と「それ以外の非定常雑音(ドアの閉まる音、犬の鳴き声、掃除機の音など)」をリアルタイムで分離し、雑音成分のみを減衰させる処理を行っています。
AI抑制の階層と計算負荷
・低レベル:背景のホワイトノイズ(サーという音)を抑える従来のデジタル信号処理(DSP)。
・自動(標準):マイクの入力レベルに応じてAIが動的に判断するモード。
・高レベル:非定常雑音を強力に排除するAIフル稼働モード。この処理にはAVX2などの拡張命令セットをサポートするプロセッサが必要です。
エンジニアリングの視点では、ノイズ抑制が「効かない」と感じる場合、AIが環境音を「人間の声の一部(あるいは必要な環境音)」と誤認しているか、もしくは演算リソースの不足により処理が簡略化されている可能性を疑うべきです。
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2. 実践:ノイズ抑制レベルを「高」に固定する手順
標準の「自動」設定では、通信の安定性を優先して抑制が甘くなることがあります。環境音が激しい場所では、手動で最大設定へ切り替えるのが正攻法です。
設定変更のステップ
- Teams画面右上の「…(設定など)」から「設定」を開きます。
- 左メニューから「デバイス」を選択します。
- 「ノイズ抑制」のドロップダウンメニューをクリックします。
- 「自動」から「高」に変更します。
※「高」設定が表示されない場合は、PCのCPUスペックがMicrosoftの定める要件を満たしていない可能性があります。その際は「低」または「自動」で運用しつつ、後述するWindows側の対策を併用します。
3. 技術的洞察:「声が途切れる」現象とエコーキャンセラーの干渉
ノイズ抑制を強めると、副作用として「話し始めの言葉が消える」「語尾が不自然にカットされる」といった現象が起きることがあります。これはノイズ抑制AIと、スピーカーから出た音をマイクが拾わないようにする「アコースティック・エコー・キャンセラー(AEC)」が、同じ周波数帯域で干渉し合っているために起こります。
音声品質を維持するための切り分け
・マイクの距離:マイクと口の距離が遠いと、AIは声をノイズと区別しにくくなります。ヘッドセットの使用はAIの判別精度を劇的に向上させます。
・音楽モードの干渉:Teamsの「高忠実度音楽モード」がオンになっていると、AIによる加工が制限され、ノイズ抑制がほぼ無効化されます。楽器を弾くのでない限り、音楽モードは必ずオフにしてください。
特にノートPCの内蔵マイクと内蔵スピーカーを同時に使用している環境では、ハウリング防止のためにOS側で強力なコンプレッサーが働き、TeamsのAI設定が上書きされてしまうケースがあります。
4. 高度な対策:Windowsドライバ側の「音響効果」を無効化する
Teamsの設定を変えても変化がない場合、Windows OS自体のマイクプロパティで「オーディオ拡張」が有効になっていることが原因です。二重にノイズキャンセルがかかることで、信号が過剰に加工され、結果として「効いていないように感じる」不具合が生じます。
OS設定のクリーンアップ
- [Win] + [R] キーを押し、
mmsys.cplと入力してサウンド設定を開きます。 - 「録音」タブを選択し、使用中のマイクを右クリックして「プロパティ」を開きます。
- 「詳細」タブまたは「拡張」タブにある「オーディオ拡張を有効にする」(または音響効果の類)のチェックを外します。
- Teamsを再起動し、Teams側のノイズ抑制だけで処理を完結させます。
これにより、音声信号が「生のデータ」に近い状態でTeamsに届くようになり、Teams側のAIアルゴリズムが本来の精度で動作できるようになります。
5. 運用の知恵:ハードウェア構成による物理的なノイズ対策
ソフトウェアによる制御には限界があります。エンジニアリング的な最適解は、ノイズを「消す」ことよりも、ノイズを「拾わせない」ことにあります。
・指向性マイクの導入:単一指向性(カーディオイド)のヘッドセットマイクは、物理的に背後の音を拾いません。
・物理ノイズゲートの利用:マイクアーム等に付属するポップガードや風防は、AIが苦手とする「吹かれ音(パフ音)」を物理的にカットするため、AIの計算資源を有効なノイズ除去に集中させることができます。
また、Bluetooth接続の場合、帯域幅の制限(HFPプロファイル)により音声が劣化するため、AIが声の成分を特定しにくくなります。極限までクリアな音声を求めるならば、USB有線接続のデバイスを選択することが、最も確実な「実利」に繋がります。
まとめ:ノイズ抑制設定の比較一覧表
| 抑制設定 | 推奨される環境 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自動(標準) | 一般的な静かなオフィス・書斎 | 急な騒音に反応が遅れる場合がある |
| 高 | カフェ、工事の音、家族の生活音 | CPU負荷増、高スペックPCが必要 |
| 低 | 空調などの一定の背景音のみ | 声の自然さは最大。突発音は拾う |
| オフ | 静室での高品質な録音時 | 全ての環境音が入るため実用には不向き |
Teamsのノイズ抑制が期待通りに動作しない背景には、設定の不備だけでなく、OSやハードウェアの制約が深く関わっています。まずはTeams内の設定を「高」へ固定し、それで改善しなければOS側のオーディオ拡張を無効化するという「外側から内側へ」の順序で点検を行うことが、トラブル解決への最短ルートです。自分の声がどのように届いているかは、定期的に「テスト通話」機能で録音・確認する習慣をつけることで、会議のたびに不安を感じる必要がなくなります。
この記事の監修者
超解決 リモートワーク研究班
Microsoft 365の導入・保守を専門とするエンジニアグループ。通信障害やサインイン不具合など、ビジネスインフラのトラブル対応に精通しています。
