エルニーニョ現象とはなにか【日本への影響とメカニズム】

目次

エルニーニョ現象の基本的な意味

エルニーニョ現象は、南米のペルー沿岸部で発生する海洋・大気現象の一つで、通常は数年に一度、特にクリスマス前後に観測されます。エルニーニョはスペイン語で「男の子」を意味し、クリスマス時期に現れることから「キリストの子」つまりイエス・キリストを指して名付けられました。

エルニーニョ現象のメカニズム

エルニーニョ現象は、通常、東太平洋(南米沿岸)は冷たい海流が優勢で、西太平洋(オーストラリアやインドネシア周辺)は暖かい海流が優勢というパターンを持つ大洋循環のバランスが崩れることで発生します。エルニーニョが発生すると、東太平洋の海水温が異常に上昇し、この変化が全球の気候に影響を与えます。

エルニーニョ現象の影響

エルニーニョ現象は、地球全体の気候に影響を及ぼす力を持っています。特に乾燥地域の降水パターンの変化、気温の変化、そしてこれらがもたらす幅広い社会経済的影響があります。

降水パターンの変化

エルニーニョの期間中、通常は乾燥している地域(例えば南米のペルーなど)では大雨が降ることがあり、洪水や地すべりを引き起こします。一方、通常は湿潤な地域(例えばオーストラリア、インドネシアなど)では雨が減少し、乾燥状態となることが多いです。

気温の変化

エルニーニョ現象は、地球全体の平均気温を上昇させる傾向があります。これは、海洋表面の温度が上昇することで、海から大気への熱の放出が増加し、全体的な気温を押し上げるからです。

社会経済的影響

エルニーニョ現象は、農業、水資源、エネルギー生産、公衆衛生など、多岐にわたる分野に影響を及ぼします。異常気象による農作物の生産量の低下、水不足や洪水によるインフラの損害、病気の拡大(例えば、蚊が増加することによるマラリアの増加など)など、その影響は広範にわたります。

エルニーニョ現象による日本への影響

エルニーニョ現象は、日本の気候にも大きな影響を及ぼします。主に冬季の気候に影響が現れ、暖冬となる傾向があります。これは、エルニーニョにより東太平洋の海水温が上昇することで、西太平洋の高温多湿な気団が強まり、その結果、日本にも暖かい空気が流れ込むからです。

冬季の気温と降雪量

エルニーニョ現象の年には、日本全体で冬の気温が平年よりも高くなる傾向があります。特に日本海側では、海からの暖かい風が陸地に吹き付けるため、気温が上昇します。また、降雪量も減少し、スキーリゾート地では雪不足に悩まされることがあります。

台風の活動

エルニーニョ現象の影響で、台風の発生地点が東にシフトすることがあります。これにより、台風が発達する時間が増え、強力な台風が発生しやすくなります。しかし、発生地点が東に移動すると、台風が日本に到達する前に北上しやすくなるため、日本への台風の上陸回数自体は減少する可能性があります。

農業への影響

エルニーニョ現象は、日本の農業にも影響を及ぼします。暖冬となると、果物の冬季の休眠期間が短くなり、品質や収穫量に影響が出ることがあります。また、雪不足により、雪解け水を利用した水田の水源が減少する地域もあります。

対極にある「ラニーニャ現象」

エルニーニョ現象とその対極にある「ラニーニャ現象」は、二つ合わせて「ENSO(エルニーニョ・南方振動)」と呼ばれる現象の一部です。ラニーニャ現象はエルニーニョ現象の逆で、東太平洋の海水温が通常よりも低下し、これもまた全球的な気候変動を引き起こすのです。