世界貿易のルール作りを担う組織、世界貿易機関(WTO)の交渉の中で、「ドーハ・ラウンド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? ドーハ・ラウンドは、WTO加盟国が取り組んでいる長期的な交渉であり、世界貿易の未来を左右する重要なテーマです。ここでは、ドーハ・ラウンドの背景や目的、現状について解説します。
目次
ドーハ・ラウンドの背景
ドーハ・ラウンドは、2001年にカタールの首都ドーハで開催されたWTO第4回閣僚会議で開始されました。それ以前のウルグアイ・ラウンド(1986-1994)での交渉が完了し、新たな交渉のテーマが求められる中で、発展途上国の貿易問題に焦点を当てたドーハ・ラウンドがスタートしました。
世界貿易機関(WTO)について
世界貿易機関(WTO)は、1995年に設立された国際機関であり、加盟国間の貿易ルールを決定したり、貿易紛争を解決したりする役割を担っています。WTOは、自由貿易の促進と保護主義の排除を目指し、世界経済の発展に貢献することを目的としています。
ドーハ・ラウンドの目的
ドーハ・ラウンドの目的は、主に以下の4テーマが挙げられます。
農業交渉
農業における輸出補助、関税、国内支援の削減を目指しています。これにより、競争が歪んでいる農業市場を健全化し、特に発展途上国の農業生産者に対する不利益を軽減することを目指しています。
非農業市場アクセス(NAMA)
工業製品や鉱物、魚介類などの非農業分野における関税を削減し、市場へのアクセスを向上させます。これにより、国際競争力を持つ産業の発展を促進し、世界貿易の拡大に貢献することを目指しています。
サービス交渉
サービス分野における貿易障壁を緩和し、国際サービス取引の自由化を進めることを目指しています。これにより、サービス産業の競争力向上や新興市場への参入を促すことが期待されます。
発展途上国の貿易関連支援
発展途上国の貿易インフラ整備や制度改革、能力向上を支援し、貿易の自由化や市場開放による恩恵を十分に享受できるようにすることを目指しています。
ドーハ・ラウンドの現状と課題
ドーハ・ラウンドは、2001年の開始以来、多くの交渉が行われてきましたが、その進展は難航しています。
加盟国間の利益対立
先進国と発展途上国の間で、農業市場やサービス市場の開放度合いに関する意見が対立しています。先進国は、発展途上国に市場を開放するよう求めていますが、発展途上国は、自国の産業や雇用を守るために、市場開放に慎重な姿勢を取っています。
多国間交渉の困難さ
WTOは、164の加盟国が参加しており、多国間での合意形成が難しい状況にあります。また、近年では、地域的な経済連携(FTAやEPA)が増え、多国間交渉よりも二国間・地域間交渉の方が優先される傾向が強まっています。
ドーハ・ラウンドは、世界貿易の自由化や発展途上国の貿易問題の解決を目指す重要な交渉です。しかし、加盟国間の利益対立や多国間交渉の困難さから、現在も交渉は難航しています。今後、WTO加盟国が協力し合い、より柔軟な交渉姿勢を取ることが求められるでしょう。
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