Microsoft 365やWindows 11のアップデートに伴い、従来のデスクトップ版Outlook(クラシック版)が、自動的に「新しいOutlook(New Outlook)」に切り替わる事象が頻発しています。新しいOutlookはウェブベースの設計であるため、操作感が大きく異なるだけでなく、これまで利用できていた主要な機能が制限されるケースも少なくありません。
「使い慣れた画面に戻したい」「アドインが動かなくなった」という切実な課題を抱えるユーザーに向けて、本記事では元のクラシック版Outlookへ確実に切り戻す手順を解説します。トグルスイッチが表示されない場合のレジストリ操作や、将来的な強制移行への対策まで、実務に必要な技術情報を網羅しています。
結論:クラシック版に戻す2つの主要な方法
- 画面右上のトグルスイッチをオフにする:最も簡単な方法です。「新しいOutlook」の右上にあるスイッチを切り替えるだけで戻ります。
- レジストリで強制的に固定する:トグルスイッチが消えた、あるいは再起動のたびに新しいOutlookが開く場合に有効な技術的手段です。
目次
1. なぜ「新しいOutlook」は使いにくいと言われるのか
Microsoftが推進する「新しいOutlook(開発コード名:Monarch)」は、実態としてOutlook.com(ウェブ版)をデスクトップアプリの枠に収めたものです。これにより、従来のデスクトップ版が備えていた高度な機能の一部が失われています。ビジネス現場で不満が続出している主な要因は以下の通りです。
技術的な機能欠落と制約
- COMアドインの非対応:企業で導入されている独自のツールや連携ソフト(電話連携、セキュリティソフト等)が一切動作しません。
- PSTファイルのサポート不足:ローカルに保存された過去のメールデータ(.pst)の閲覧や管理に制限があります。
- オフライン動作の不安定さ:ウェブベースの設計上、インターネット接続が不安定な環境でのパフォーマンスが大幅に低下します。
- UIの激変:リボンメニューや右クリック項目の配置が変更され、長年培ったショートカット操作が無効化されています。
2. 画面右上のスイッチで戻す標準的な手順
現在、最も一般的な切り戻し方法は、アプリ内のスイッチ操作です。
- 「新しいOutlook」を起動します。
- 画面の右上端にある「新しいOutlookを試す」というトグルスイッチを確認します。
- このスイッチを「オフ」にします。
- 「フィードバック」の送信画面が表示されますが、任意で回答するか、そのまま閉じます。
- 自動的にアプリが再起動し、元のクラシック版Outlookが立ち上がります。
3. 【重要】トグルスイッチが表示されない場合の強制復旧策
アップデートの状況によっては、切り戻すためのスイッチ自体が画面から消滅することがあります。この場合、Windowsのレジストリを直接編集することで、システムに対して「クラシック版を優先する」ように命令を送ることができます。
レジストリ編集による解決手順
※レジストリの操作は誤るとシステムに影響を与えるため、慎重に行ってください。
- キーボードの「Windowsキー + R」を押し、
regeditと入力して実行します。 - 以下のパスに移動します:
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\16.0\Outlook\Options\General - 右側のパネルで 「v3Migration」 または 「UseCaseSpecificSetting」 という値を探します。
- これらが見当たらない場合は、右クリック > 新規 > DWORD(32ビット)値 で作成します。
- 値を
0に設定します。 - レジストリエディタを閉じ、PCを再起動してからOutlookを開きます。
4. クラシック版と「新しいOutlook」の機能比較表
現状の各バージョンにおける対応状況を整理しました。どちらを使用すべきかの判断基準として活用してください。
| 機能・項目 | クラシック版 | 新しいOutlook |
|---|---|---|
| オフライン使用 | 完全対応 | 限定的(今後の更新待ち) |
| COM/VSTOアドイン | 対応(ビジネス利用に必須) | 非対応(Webアドインのみ) |
| PSTファイル | 対応 | 一部非対応・順次実装 |
| メモリ消費量 | 標準的 | 軽量(WebView2依存) |
5. 今後のサポート終了スケジュールと準備
Microsoftは、クラシック版Outlookを無期限にサポートするわけではありません。公式の発表に基づくと、段階的に「新しいOutlook」への完全移行が進められます。2025年時点での見通しは以下の通りです。
移行の3フェーズ
- オプトインフェーズ(現在):ユーザーが任意で新しいOutlookを試すことができる期間。
- オプトアウトフェーズ:デフォルトが新しいOutlookになり、クラシックに戻すには手動設定が必要な期間。
- 完全移行(2029年以降予定):クラシック版の提供およびサポートが終了。
少なくとも数年間はクラシック版を使い続けることが可能ですが、その間に企業側はアドインのWeb版への移行や、ワークフローの再構築を行う必要があります。特に、レガシーなマクロや連携システムを抱えている場合は、早期の「棚卸し」が推奨されます。
まとめ:安易な移行を避け、業務継続性を優先する
Microsoftによる「新しいOutlook」への誘導は非常に強力ですが、機能面で未完成な部分が多いのも事実です。特にアドインやPSTファイルを多用するビジネス環境では、現時点で無理に移行する必要はありません。
もし意図せず切り替わってしまった場合は、本稿で紹介したトグルスイッチ、あるいはレジストリによる切り戻し手順を実行してください。OS側が勝手に「利便性」を押し付けてきたとしても、実務において最優先されるべきは「確実に仕事ができる環境」の維持に他なりません。各個人の業務に合わせ、最適なタイミングで環境を選択することが重要です。
