投資判断ではNPV(正味現在価値)と並んでIRR(内部収益率)がよく使われます。IRRは「NPVがちょうどゼロになる割引率」のことで、その投資が年率何パーセントの収益をもたらすかを示す重要な指標です。
Googleスプレッドシートには IRR関数が用意されており、初期投資と将来キャッシュフローを並べた範囲を渡すだけで、内部収益率を瞬時に計算できます。期待する収益率(資本コスト)と比較して、投資判断の根拠とする使い方が一般的です。
本記事では、IRR関数の基本構文、初期投資の扱い、NPVとの関係、結果が複数解になる場合の対処、不定期キャッシュフローへの対応までをまとめて解説します。
【要点】IRR関数で投資の収益率を求める3つのポイント
- =IRR(キャッシュフロー範囲) で内部収益率を計算: 初期投資を含む全期間のキャッシュフローを渡します。
- 初期投資を範囲の先頭に含める: NPVと違いIRRは0期目を含む範囲指定が必要です。
- 必要収益率と比較してGo・NoGo判定: IRR ≧ 資本コストなら投資価値あり、それ以下なら見送りが基本判断です。
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目次
IRR関数の構文と引数の意味
IRR関数の基本構文は =IRR(values, [guess]) です。第1引数 values は初期投資から最終期までのすべてのキャッシュフローを含む範囲、第2引数 guess は推定値で省略可能です。NPV関数と違い、IRRは初期投資を範囲の先頭に含める仕様になっています。
IRRは「NPVがゼロになる割引率」と定義されており、内部で繰り返し計算により近似値を求めます。多くの場合は計算が一意に収束しますが、キャッシュフローの符号が複数回変わる場合は複数の解が存在することがあり、guess引数で初期推定値を渡すと特定の解に誘導できます。
結果は割合(0.085なら8.5%)で返されます。表示形式をパーセントに切り替えると読みやすくなります。資本コスト(例: 5%)と比較し、IRRが上回ればその投資は経済的に意味があると判断します。
IRR関数で内部収益率を計算する基本手順
- キャッシュフロー全体をひとつの列に並べます
A1に初期投資 -1000000、A2:A6に1〜5期目のキャッシュフロー(例: 200000, 250000, 300000, 280000, 350000)を入れます。0期目は必ず負の値です。 - 結果セルに =IRR(A1:A6) を入力します
初期投資から最終期までを連続範囲で指定します。例えば10%前後のIRRが返ります。 - セル書式をパーセントに変更します
結果が0.10のような小数で表示されるため、ツールバーの「表示形式」→「パーセント」で読みやすくします。 - 資本コストと比較
=IF(B1>=自社の資本コスト, “投資価値あり”, “見送り”) のような数式で自動判定にすると、複数案件のスクリーニングが効率化されます。 - NPVと併用して総合判断
NPVが正でIRRも資本コストより高い案件が「両方満たす」優良投資です。意思決定の根拠が二重に裏付けられます。
不定期キャッシュフローのXIRR活用手順
- 日付列とキャッシュフロー列を用意
A列に支払日(2025-01-15のような日付)、B列に金額(初期投資は負・回収は正)を並べます。期間が不定期な実取引に近いデータ構造です。 - =XIRR(B1:B10, A1:A10) を入力
日付に基づき正確な期間を考慮したIRRを計算します。月単位が崩れる実プロジェクトに向いた関数です。 - guess引数を試す
解が収束しない場合は =XIRR(B1:B10, A1:A10, 0.1) のように初期推定値を渡すと安定計算しやすくなります。 - 不動産投資シミュレーションへ応用
賃料収入の月次受取と途中での修繕費出費など、不規則な実キャッシュフローを XIRR で評価できます。
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IRR関数でつまずきやすいパターン
結果が #NUM! エラーになる
キャッシュフローに正負の両方が含まれていない、または計算が収束しない場合に発生します。範囲が「初期投資(負)+回収(正)」の符号変化を1回以上含んでいることを確認してください。改善しない時は guess引数で初期推定値を渡すと収束することがあります。
IRRが期待より低い
回収期間が長い投資はIRRが下がる傾向があります。同じ総回収額でも、早期に多く回収する案件の方がIRRは高く出ます。複数案件を比較する際は、IRRの大小だけでなくキャッシュフローのパターンも確認することが重要です。
複数解になることがある
途中で大きな追加投資があるなど、符号変化が複数回ある場合、数学的に複数のIRR解が存在することがあります。guess引数で目的の解に近い値を指定するか、MIRR(修正内部収益率)を使うと一意の解になります。
IRRが高いほど良いという単純判断は危険
IRRは収益率を相対値で示すため、規模感が反映されません。IRR20%だが投資額10万円の案件と、IRR12%だが投資額1億円の案件では、創出される利益総額は後者が遥かに大きいケースもあります。NPVの絶対値も併せて判断してください。
IRR関連関数の使い分け比較
| 関数 | 用途 | 適合シーン |
|---|---|---|
| IRR | 定期キャッシュフローのIRR | 毎年同じ間隔の投資 |
| XIRR | 不定期キャッシュフローのIRR | 実取引の日付ベース |
| MIRR | 修正内部収益率 | 再投資率と借入率を分離 |
| NPV | 正味現在価値 | 絶対金額での評価 |
| RATE | 定期返済の利率 | ローン契約の利率分析 |
まとめ
IRR関数は投資の内部収益率を計算する財務関数で、=IRR(キャッシュフロー範囲) という構文で使います。NPVと違い初期投資を含む範囲指定が必要な点に注意してください。結果は割合で返るためパーセント表示にし、資本コストと比較してGo・NoGo判定の根拠とします。複数案件の比較ではIRRだけでなくNPVも併せて確認することで、規模と収益率の両面から総合的な判断ができます。日付ベースの不定期キャッシュフローには XIRR、複数解問題を回避したい場合は MIRR を使い分けてください。
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超解決 第一編集部
疑問解決ポータル「超解決」の編集チーム。正確な検証と、現場視点での伝わりやすい解説を心がけています。
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