Excelで大規模なデータセットを扱ったり、外部ソースからデータを参照したりしている際、セルに「#GETTING_DATA(データを取得しています)」というメッセージが表示されたまま動かなくなることがあります。これは数式の記述ミスによるエラーではなく、Excelが計算を完了させるために必要なデータの読み込みを待機している「処理中」の状態を指します。
通常は数秒で値に切り替わりますが、ブックの構造が複雑であったり、外部接続の設定に不備があったりすると、この表示が消えずに作業が中断されてしまいます。本記事では、#GETTING_DATAが表示され続ける論理的な要因を特定し、計算エンジンの優先順位調整や接続設定の最適化によって、この待機状態を解消する技術的な手順を詳説します。
結論:#GETTING_DATAを解消し計算を完了させる3つの手順
- 再計算(F9キー)を強制実行する:Excelの計算エンジンに対し、保留されているデータ取得と演算を最優先で処理させます。
- 外部接続の「バックグラウンド更新」をオフにする:データの取得を逐次処理に切り替え、読み込み完了まで計算を確実に待機させます。
- 計算方法を「手動」に切り替えて負荷を抑える:一時的に自動計算を停止し、データ取得が完了したタイミングで一括処理を行います。
目次
1. #GETTING_DATAが表示され続ける技術的背景
Excel 2010以降の計算エンジンは、複雑な計算を非同期(マルチスレッド)で処理する機能を備えています。#GETTING_DATAは、この非同期処理中に表示される「プレースホルダー(一時的な表示)」です。
待機状態が長引く主な要因
- 外部データとの同期遅延:Power Query(取得と変換)やWEBサービス関数の実行時、データのダウンロードに時間がかかっている、あるいはタイムアウトが発生している状態です。
- 計算リソースの競合:非常に多くのセルで複雑な配列数式やリンクされたデータ型(株価など)が使用されており、CPUの処理待ち行列が滞留しています。
- アドインの干渉:Excelの計算サイクルに介入する外部アドインが、データ取得の完了通知を妨げているケースがあります。
2. 手順①:強制再計算によるステータス更新
描画上のバグや、計算サイクルの優先順位の入れ替わりによって表示が残っている場合に有効な手順です。
- キーボードの F9 キー(再計算)を押します。
- 改善しない場合は、Ctrl + Alt + F9 を押し、依存関係をすべて無視してブック全体の再計算を強制実行します。
- 画面左下のステータスバーを確認し、「計算中 (x%)」や「スレッド数」の表示が動いているか点検します。100%になっても#GETTING_DATAが消えない場合は、データの参照元に問題があります。
3. 手順②:クエリ接続の最適化(バックグラウンド更新の停止)
Power Queryを使用してデータを取得している場合に、最も効果的な解決策です。Excelが「裏側でこっそり更新」するのを止め、確実に読み込ませます。
- 「データ」タブ > 「クエリと接続」をクリックします。
- 右側に表示されたクエリを右クリックし、「プロパティ」を選択します。
- 「使用状況」タブにある「バックグラウンドで更新する」のチェックを外します。
- 「OK」をクリックし、再度データを更新します。
この設定変更により、データの読み込みが完了するまでExcelが次の操作を待機するようになるため、計算不全による#GETTING_DATAの発生を論理的に防止できます。
4. 手順③:計算方法の制御(手動計算への切り替え)
データ取得と再計算がループしてフリーズに近い状態になっている場合の回避策です。
- 「数式」タブ > 「計算方法の設定」をクリックします。
- 設定を 「手動」 に変更します。
- この状態で、データの更新操作のみを先に完了させます。
- すべてのデータ取得が終わったことを確認してから、F9キーを押して計算を一度に実行させます。
5. 技術仕様:#GETTING_DATAと他のエラーの判別表
| エラー表示 | 論理的な状態 | 解決の難易度 |
|---|---|---|
| #GETTING_DATA | 計算は正しいが、値の到着を待っている。 | 低(待機または設定変更で解決) |
| #REF! | 参照すべき住所(セル)自体が消失している。 | 中(数式の書き直しが必要) |
| #N/A | 参照先はあるが、該当するデータが見つからない。 | 中(データの中身を確認) |
| #VALUE! | 演算に使用するデータの型(数値と文字など)が不一致。 | 高(データのクレンジングが必要) |
まとめ:計算リソースとデータ取得パスの健全化
Excelの#GETTING_DATAは、最新のExcelが高度な非同期処理を行っている証拠でもありますが、巨大なブックにおいては処理のボトルネックを可視化する指標となります。この表示が消えない場合、Excelの「計算順序の最適化」と「データ取得の待機ルール(バックグラウンド設定)」の不整合を修正することが必要です。
実務においては、まず強制再計算によるリセットを試し、改善が見られない場合は接続プロパティを見直してください。特にPower Queryを利用したデータ連携においては、バックグラウンド更新を無効化することで、動作の安定性が飛躍的に向上します。Excelの処理能力とデータの複雑性を論理的にバランスさせることで、ストレスのない効率的な分析環境を維持してください。
