仕事でChatGPTにメールの代筆を頼んだ際、「お世話になっております」が何度も続いたり、懄懄無礼なほど丁寧すぎて逆に失礼に感じたりすることはないでしょうか。実は、ChatGPTの標準設定では「最も無難で丁寧な表現」が選ばれるようになっているため、そのままでは実務に使えないケースが多々あります。
目次
1. ChatGPTのメールが「不自然」に感じる3つの原因
なぜChatGPTが書くメールは、読み手に「これはAIが書いたな」とすぐに見破られてしまうのでしょうか。そこには、日本語特有の距離感とAIの学習データのズレという明確な理由があります。
① 敬語の過剰な積み上げ(二重敬語)
AIは「失礼のないように」という指示を、言葉を長くすることだと解釈しがちです。その結果、「~させていただきたく存じます」といった重苦しい表現が連続し、現代のビジネススピードに合わない、古臭い印象の文章が生成されてしまいます。
② 結論が見えない「枕詞」の多さ
「日頃より多大なるご厚情を賜り~」といった、形式的な挨拶が長すぎて、肝心の用件がどこにあるのか分からない構成になりやすいのもAIの特徴です。多忙なサラリーマンにとって、こうした冗長な文章は「読み飛ばされる対象」になってしまいます。
③ 相手との「距離感」の読み間違い
「長年の付き合いがあるパートナー」と「初めて問い合わせをする相手」では、選ぶべき言葉が全く異なります。AIはこの距離感を判別できないため、常に最大級の丁寧さを発揮してしまい、親しい相手にはかえって冷たい、よそよそしい印象を与えてしまうのです。
2. AI臭さを消し去る「構造化プロンプト」の基本形
ChatGPTに「メールを書いて」とだけ頼むのは今日で終わりにしましょう。以下の4つの項目を伝えるだけで、手直し不要なレベルのメールが完成します。これを専門用語で「構造化プロンプト」と呼びますが、要は「情報の伝え方の整理」です。
| 項目 | 伝えるべきこと | 具体例 |
|---|---|---|
| 役割(Role) | 自分がどのような立場の人間か | 10年目の営業、技術部リーダー |
| 背景(Context) | 相手との関係性や今の状況 | 過去に3回取引がある、急ぎの案件 |
| 目的(Goal) | 何をしてほしいのか、何を伝えたいか | 納期を3日延ばしてほしい、会議の打診 |
| 文体(Style) | どのような雰囲気で書きたいか | 簡潔に、誠実に、ドライに、柔らかく |
3. 【そのままコピー可】状況別の最強プロンプトテンプレート
実務で頻出するシチュエーション別に、AIの悪い癖を完全に封じ込めたプロンプトを用意しました。{}の部分を書き換えてChatGPTに投げてください。
パターンA:【謝罪】納期遅延・ミスを報告する場合
最も気を使う謝罪メールでは、AIの「言い訳がましい表現」を排除することが重要です。
# 指示:
あなたは誠実なプロジェクトマネージャーとして、クライアントへ謝罪メールを書いてください。
# 背景:
– 状況:{システム納期の3日遅延}
– 原因:{最終テストでのバグ発覚}
– 対策:{週末返上で対応し、○月○日には確実に納品する}
# 制約:
– 「申し訳ございません」の連発を避け、原因と対策を論理的に説明してください。
– AI特有の「お力になれず残念です」といった感情的なポエムは一切不要です。
– です・ます調で、簡潔にまとめてください。
パターンB:【依頼】多忙な相手に打ち合わせを打診する場合
相手の時間を奪う依頼メールでは、結論を先に出し、候補日を明示する「デキる社員」のトーンを再現します。
# 指示:
取引先の担当者へ、Zoom会議の調整メールを書いてください。
# 目的:
– 用件:{次期プロジェクトの予算案についての相談}
– 希望時間:30分程度
– 候補日:{来週水曜14時、木曜11時、金曜15時}
# 文体:
– 結論から書き始め、相手が5秒で内容を理解できる構成にしてください。
– 箇条書きを効果的に使ってください。
4. 精度をさらに上げる「ネガティブ指示」のテクニック
生成された文章がまだ「AIっぽい」と感じるなら、以下の「禁止事項」をプロンプトの最後に追加してください。これだけで文章のキレが劇的に変わります。
- 「感嘆符(!)や絵文字を一切使わないでください」: ビジネス文書としての重みが加わります。
- 「『~させていただきます』を『いたします』に書き換えてください」: 卑屈な印象が消え、能動的なプロフェッショナルの印象になります。
- 「時候の挨拶(拝啓、陽春の候など)はカットしてください」: 本題にすぐ入る、実務的なメールになります。
- 「一文を60文字以内に抑えてください」: スマホで見たときにも読みやすい、風通しの良い文章になります。
5. セキュリティ上の注意点:個人情報は絶対に入力しない
ChatGPTを便利に使う上で、絶対に守らなければならないルールがセキュリティです。特に以下の情報は、そのまま入力してはいけません。
- 取引先の担当者名や自分の本名
- 具体的な社名やプロジェクト名
- 未公開の予算数値や機密情報
これらを入力すると、AIの学習データとして蓄積され、意図せず外部に漏洩するリスクがあります。入力時は「A社」「プロジェクトX」「予算○万円」といった伏せ字を使い、AIが生成した後に自分で正しい名称に書き換えるのが、プロの賢い使い方です。
6. まとめ:AIを「下書き機」として使い倒す
ChatGPTに100点のメールを書かせようとする必要はありません。80点のドラフトをAIに数秒で出させ、自分は最後の20点(固有名詞のチェックや、その人ならではの配慮の言葉)を整える。この使い分けができるようになれば、メール作成に奪われていた時間は1/10に減り、本当に集中すべき業務に時間を使えるようになります。
