Windowsの再起動やシャットダウン後、ログインした瞬間に「前回閉じる前に開いていたフォルダ」がデスクトップに次々と立ち上がってくる現象。これはWindowsに標準搭載されている『以前のフォルダーウィンドウをログオン時に復元する』という、作業の継続性を助けるための機能が有効になっていることが原因です。
しかし、起動速度を優先したい場合や、まっさらな状態で作業を開始したいユーザーにとっては、不要なウィンドウが視界を遮る「お節介な機能」となってしまいます。また、Windows 10や11では、フォルダ設定とは別に「サインインオプション」がアプリの再起動を制御しているケースもあります。本記事では、これらの設定を論理的に切り分け、起動時の自動復元を完全に停止させる手順を解説します。
結論:自動復元を止める2つの主要設定
- フォルダーオプションを見直す:エクスプローラーの設定にある「以前のフォルダーウィンドウをログオン時に復元する」のチェックを外します。
- サインインオプションを変更する:Windowsの設定にある「再起動可能なアプリを自動的に保存し…」のスイッチをオフにします。
- スタートアップフォルダを確認する:特定のフォルダだけが常に開く場合は、スタートアップ項目にショートカットが混入していないか確認します。
目次
1. なぜフォルダが勝手に開くのか:2つの制御メカニズム
Windowsにおいて、起動時にフォルダやアプリが復元される仕組みは、歴史的なOSの仕様と、現代的な「高速スタートアップ」の仕様の2段構えになっています。
① エクスプローラーの「復元」機能
Windows 95時代から続く伝統的な機能です。エクスプローラーが終了時の状態をレジストリに保存し、次回ログイン時にそのパス(住所)を読み取ってウィンドウを再生成します。これは「フォルダのみ」に限定された設定です。
② アプリの再起動(サインインオプション)
Windows 10の後半から導入された機能です。シャットダウン時に「OSがアプリの状態を記憶」し、再起動後にEdgeやExcel、そしてエクスプローラーを、閉じる直前の状態で復元します。スマホのアプリ切り替えに近い挙動を目指した設定ですが、意図しないウィンドウまで引き継いでしまう要因となります。
2. 手順①:エクスプローラーの設定で復元をオフにする
最も一般的な原因である「フォルダーオプション」を修正します。この設定は、フォルダを一つずつ手動で閉じたかどうかに関わらず、システムが最後に開いていた場所を記憶するかどうかを決定します。
- エクスプローラー(適当なフォルダ)を開きます。
- 上部のメニュー(…)から「オプション」をクリックします。
- 「表示」タブを選択します。
- 「詳細設定」のリストを一番下までスクロールし、「以前のフォルダー ウィンドウをログオン時に復元する」のチェックを外します。
- 「適用」をクリックし、「OK」で閉じます。
3. 手順②:Windowsの「サインインオプション」を調整する
手順①を行ってもフォルダやアプリが復活する場合、Windows OS側の「アプリの状態保存」機能が働いています。これを無効化することで、完全にクリーンな起動が可能になります。
Windows 11の設定手順
- 「設定」(Win + I)を開きます。
- 左メニューから「アカウント」を選択します。
- 「サインイン オプション」をクリックします。
- 「追加の設定」セクションにある、「再起動可能なアプリを自動的に保存し、サインインし直したときに再起動する」のスイッチをオフにします。
4. 手順③:特定のフォルダのみ開く場合の対処(スタートアップ)
「前回開いていた場所ではなく、常に特定のフォルダ(ドキュメント等)が開く」という場合は、Windowsのスタートアップフォルダにそのフォルダのショートカットが誤って登録されている可能性があります。
- 「Win + R」を押し、
shell:startupと入力して実行します。 - 開いたフォルダ(スタートアップフォルダ)の中に、フォルダのショートカットがないか確認します。
- 不要なものがあれば、それを削除します。
5. 設定項目別の効果比較表
どの設定がどの挙動を司っているかを整理しました。自身の不満に合わせて調整してください。
| 設定場所 | 対象範囲 | 効果 |
|---|---|---|
| フォルダーオプション | フォルダウィンドウのみ | 最後に開いていたフォルダの復元を停止。 |
| サインインオプション | アプリ全体+エクスプローラー | ブラウザやOffice等の状態保持を停止。 |
| スタートアップフォルダ | 特定の登録済みアイテム | 毎回決まったフォルダが開く現象を停止。 |
6. 技術仕様:レジストリでの強制無効化(IT管理者向け)
グループポリシーや設定画面が制限されている環境で、レジストリから強制的に設定を書き換える手法です。
- フォルダ復元のレジストリパス:
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\Advanced
値の名前:PersistBrowsers
値のデータ:0(無効) /1(有効) - アプリ再起動のレジストリパス:
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\SignInAssistantOptions
値の名前:RestartApps
値のデータ:0(無効)
まとめ:起動時の「ノイズ」を排除して集中力を高める
PCを起動した直後、画面上に前日の作業の残骸が散らばっている状態は、新しいタスクに取り組む際の認知負荷を高めます。Windowsの「復元機能」は、本来は親切心から設計されたものですが、自身のワークフローに合わない場合は、本稿の手順で論理的に排除することが可能です。
まずはエクスプローラーの「フォルダーオプション」を確認し、それでも解消しない場合は「サインインオプション」をチェックしてください。システムが自動で行う「記憶」をあえて遮断することで、毎朝まっさらなデスクトップから一日をスタートできる、快適なデジタルワークスペースを維持することができます。
