Excelで作成した複数のワークシートをPDF化する際、1シートずつ保存しては結合ソフトで繋ぎ合わせる……という非効率な作業を繰り返してはいませんか?機密性の高いビジネス文書を無料のオンライン結合サイトにアップロードするのはセキュリティ上のリスクも伴います。
Excelには標準機能として、複数のシートを一括で、かつ「1つのPDFファイル」として書き出す機能が備わっています。さらに、各シートでバラバラになりがちなページ番号を、全シート通しての「連番」として正しく振ることも技術的に可能です。本記事では、外部ツールを一切使わず、Excelの設定だけで完結するプロフェッショナルなPDF作成手順を詳説します。
結論:複数シートを1枚のPDFにまとめる3つのステップ
- 対象のシートを「作業グループ」にする:Ctrlキーを押しながらシート見出しを選択し、出力対象を確定させます。
- エクスポートオプションで「選択したシート」を指定:保存時の設定でブック全体、あるいは選択範囲のみをPDF化するよう指示します。
- ページ設定を「自動」にして連番を維持:各シートの開始ページ番号を『自動』に揃えることで、シートを跨いだ通し番号を実現します。
目次
1. 結合ソフト不要!Excel標準機能でPDF化するメリット
なぜExcel内で完結させるべきなのか、そこには単なる時短以上の技術的・安全上の理由があります。
技術的な利点
- フォントの埋め込み精度:Excelから直接出力することで、文字化けやレイアウト崩れのリスクを最小限に抑えられます。
- リンク・目次の保持:ブック内のハイパーリンクをPDF上のリンクとして維持したまま出力可能です。
- ページ番号の整合性:後からPDFを結合するとページ番号が「1, 2, 1, 2…」とリセットされますが、Excel出力なら「1, 2, 3, 4…」と連番にできます。
- セキュリティ:社外のサーバーにデータを送る必要がないため、情報漏洩のリスクがありません。
2. 手順①:出力したいシートを「作業グループ」にする
PDFに含めたいシートをExcelに認識させるための事前準備です。この「選択状態」がそのままPDFの構成順になります。
- 画面下部のシート見出し(タブ)を確認します。
- 連続するシートを選択する場合:最初のシートをクリックし、Shiftキーを押しながら最後のシートをクリックします。
- 離れたシートを選択する場合:Ctrlキーを押しながら、含めたいシートを一つずつクリックします。
- タイトルバーに「[グループ]」と表示されれば、準備完了です。
3. 手順②:1つのPDFとしてエクスポートする
「名前を付けて保存」ではなく、より詳細な設定が可能な「エクスポート」機能を使用するのが確実です。
- 「ファイル」タブ > 「エクスポート」 > 「PDF/XPSの作成」をクリックします。
- 保存場所を選択する画面で、右下にある「オプション」ボタンをクリックします。
- 「発行対象」のセクションで「選択したシート」(またはブック全体)にチェックが入っていることを確認します。
- 「OK」を押し、「発行」をクリックします。
4. 手順③:ページ番号を「連番」にするための技術設定
PDF化した際、各シートの1ページ目がすべて「1ページ目」と表示されてしまうのを防ぎ、全体で通し番号を振るための設定です。
- PDF化したい全シートを作業グループ(手順①)にした状態で操作します。
- 「ページ レイアウト」タブの右下にある、小さな矢印(ページ設定ダイアログボックスランチャー)をクリックします。
- 「ページ」タブの一番下にある「開始ページ番号」を確認します。
- ここが特定の数字(「1」など)になっていると連番になりません。必ず「自動」に書き換えます。
- 「ヘッダー/フッター」タブで「&[ページ番号] / &[総ページ数]」などを設定すれば、全シートを通した正しい番号が振られます。
5. トラブル回避:PDF出力がうまくいかない時のチェックリスト
| 現象 | 原因 | 解決策 |
|---|---|---|
| シートごとにファイルが分かれる | 各シートの「印刷品質(DPI)」が異なっている。 | 全シートを選択した状態でページ設定を開き、解像度を統一する。 |
| 特定のシートだけ出力されない | 印刷範囲の設定が「空」または不正。 | 改ページプレビューで青い枠線が正しく設定されているか確認。 |
| ファイルサイズが巨大すぎる | 高解像度画像が含まれている。 | エクスポート時の最適化設定を「最小サイズ」にする。 |
まとめ:資料としての「完成度」をExcel機能で高める
複数のシートを1枚のPDFにまとめる作業は、単なるファイルの整理ではなく、読み手に対する「配慮」です。ページ番号がリセットされることなく、論理的に繋がった1つのドキュメントを提供することは、ビジネス資料の信頼性に直結します。
「シートを選択し、オプションで発行対象を確認する」。この基本さえ押さえれば、サードパーティ製のアプリを介在させる必要はありません。特に「開始ページ番号:自動」の設定は、Excel中級者でも見落としがちなポイントです。ツールが持つ本来の仕様を正しく制御し、無駄な結合作業を排除した「超解決」なワークフローを確立してください。
