余りの定理の概要

余りの定理とは、多項式を一次式で割ったときの余りを簡単に求めるための数学的な法則です。具体的には、多項式 f(x)f(x) を一次式 xax – a で割ったときの余りは、f(a)f(a) の値に等しくなります。この定理を利用することで、実際に筆算を行わなくても、代入計算だけで余りを求めることができます。

余りの定理の式と証明

基本的な式

任意の多項式 f(x)f(x) を一次式 xax – a で割ると、商 q(x)q(x) と余り rr を用いて次のように表されます。

f(x)=(xa)q(x)+rf(x) = (x – a)q(x) + r

ここで、余り rr は、一次式で割った場合、必ず定数となります。つまり、rrxx を含まない定数です。

この式において、x=ax = a を代入すると、

f(a)=(aa)q(a)+r=0q(a)+r=rf(a) = (a – a) q(a) + r = 0 \cdot q(a) + r = r

となり、余り rrf(a)f(a) の値と等しいことが示されます。

具体例

例えば、次の多項式

f(x)=x33x2+4x5f(x) = x^3 – 3x^2 + 4x – 5

x2x – 2 で割ったときの余りを求めます。余りの定理を使うと、x=2x = 2 を代入するだけで余りが求まります。

f(2)=233(22)+4(2)5f(2) = 2^3 – 3(2^2) + 4(2) – 5 =812+85= 8 – 12 + 8 – 5 =1= -1

したがって、余りは 1-1 です。

余りの定理の応用

因数定理との関係

余りの定理は、因数定理と密接に関連しています。因数定理とは、ある多項式 f(x)f(x)xax – a を因数に持つための条件を示すもので、次のように表されます。

f(a)=0(xa) は f(x) の因数f(a) = 0 \quad \Rightarrow \quad (x – a) \text{ は } f(x) \text{ の因数}

つまり、余りの定理を利用して f(a)=0f(a) = 0 となる aa を見つけることで、多項式の因数を特定することができます。

多項式の因数分解

多項式の因数分解を行う際に、余りの定理を活用して因数を特定することができます。例えば、次の多項式を因数分解することを考えます。

f(x)=x33x2+x+3f(x) = x^3 – 3x^2 + x + 3

まず、因数の候補として f(a)=0f(a) = 0 となる aa を探します。試しに x=3x = 3 を代入すると、

f(3)=333(32)+3+3=2727+3+3=0f(3) = 3^3 – 3(3^2) + 3 + 3 = 27 – 27 + 3 + 3 = 0

よって、x3x – 3f(x)f(x) の因数であることが分かります。次に、f(x)f(x)x3x – 3 で割ることで、完全な因数分解を行うことができます。

剰余を求める計算の簡略化

多項式を割る際に、実際に筆算を行うと計算が煩雑になる場合があります。しかし、余りの定理を使えば、余りだけを素早く求めることができます。これは、数値解析やアルゴリズムの最適化においても役立ちます。

余りの定理の限界と注意点

一次式での割り算に限定される

余りの定理は「一次式」xax – a で割る場合に適用される法則です。二次式やそれ以上の次数の多項式で割る場合には適用できません。このような場合には、多項式の長除法やホーナー法を用いる必要があります。

整数係数の多項式に限定されない

余りの定理は整数係数の多項式だけでなく、有理数や実数、さらには複素数係数の多項式にも適用できます。例えば、次の複素数を含む多項式に対しても適用可能です。

f(x)=x3+(2+i)x2+(3i)x+4f(x) = x^3 + (2 + i)x^2 + (3 – i)x + 4

この場合でも、f(a)f(a) を計算することで余りを求めることができます。

まとめ

余りの定理は、多項式を一次式で割ったときの余りが、被除数の多項式に割る数を代入した値に等しいことを示す数学の基本的な法則です。

この法則を利用することで、因数定理との関係を明らかにし、多項式の因数分解や剰余計算を効率的に行うことができます。特に、複雑な多項式の割り算を簡単に処理できるため、数学の基礎理論としてだけでなく、計算の実用的な場面でも重要な役割を果たします。

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