知らない弁護士から「故人の資金をあなた名義に変更し、ATMカードで送る」「受け取ったお金は50%ずつ分ける」というメールが届いても、氏名・住所・電話番号を返信しないでください。リンクも添付もないから安全、相手が費用を負担するから損はない、とはいえません。
この手口では、最初の返事をきっかけに個人情報を聞き出したり、後から手数料などの支払いへ話を進めたりします。ここでは実際の英文を読みながら、資金の受け取り話に潜む不自然な点と、返信してしまった場合の対処を説明します。
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「business transaction funds」「ATM CARD」と書かれたメール
件名は「RE: I am addressing this mail to you again which concerns business transaction funds」に日時が続く形です。「事業取引の資金について、もう一度連絡しています」という意味で、過去にやり取りがあったかのように始まります。
次が本文です。差出人の氏名と電話番号は置き換えています。
Hello
I am addressing this mail to you again which concerns business transaction funds. I had earlier written to you but you never reciprocated my email, Kindly contact me so that i can apply for the release of the funds and pay for the affidavit of claim and delivery of the ATM Card.
Like i said before I have discussed with the bank that I will be getting the next of kin soon and I will want the bank to process and send by courier delivery the funds by ATM CARD to the next of kin which I will pay for the delivery fee and I will pay for the affidavit of claim to change the name on deposit to your name. All arrangements have been made for a stress free transaction. The delivery company will deliver the ATM CARD to your doorstep which I will pay for.
ATM CARD is the best option to redraw money to avoid huge international bank transfer tax fees. Please consider this transaction so I will ask the bank to prepare the ATM CARD on your name.
We will share the money accordingly 50% for you and 50% for me. Every legal formality will be handled by our law firm.
Send to me the below:
Full names:
Address:
Telephone Number:
I will be using your information to apply to get an affidavit of claim. Note I already have the death certificate of my client. The affidavit of claim will be ready immediately I have the above information.
Best personal regards,
[差出人名] (Esq.)
Tel:[電話番号省略]
大意は「以前のメールに返事がなかった。銀行に近親者が見つかると話しておいたので、あなたの名義で資金を引き出せるATMカードを送る。請求の宣誓供述書や配送の費用はこちらが払う。お金は半分ずつにするので、氏名、住所、電話番号を送ってほしい」です。
「next of kin」は近親者、「affidavit of claim」は権利を申し立てる宣誓供述書を指す表現です。難しい単語や法律家風の署名を使っていても、その人が本物の弁護士であることや、読者に受取資格があることの証明にはなりません。
この話を信用してはいけない理由
親族関係の説明より先に「あなたの名義にする」と言う
本文には、亡くなった依頼人と受信者がどのような関係なのか、なぜ受信者が権利者なのかという説明がありません。それより先に、預金の名義を変更する、近親者として手続きを進める、という話が置かれています。
身に覚えのない資金について、知らない相手の指示に従って受取人や親族として名乗り出ないでください。相手が死亡証明書を持っていると書いていても、それだけで受信者の権利が生まれるわけではありません。本当に親族の相続に心当たりがあるなら、このメールへの返信ではなく、家族や独立して探した専門家に確認します。
「手数料は私が払う」を何度も繰り返す
本文では配送費や書類費を送信者が払うと繰り返しています。読者に「こちらは負担しないのだから、とりあえず返事だけしてみよう」と思わせる誘い方です。
この段階で要求されているのは氏名・住所・電話番号です。まだ送金を求められていなくても、個人情報を渡す不利益はあります。その後に追加の証明書、税金、カード有効化費用などの名目が出ても、話を信じて支払いに進まないでください。「ここまで手続きをしたから」と、受け取れる見込みのないお金のために負担を重ねることを避けます。
利益の半分を、知らない人へ約束している
「50% for you and 50% for me」という分配条件が示される一方、具体的な権利関係を確認する手順はありません。大きな利益の約束が先に置かれ、本人情報の提出へ話が進む構造です。
米FTCの相続・保険金を装う詐欺の注意喚起でも、法律事務所を名乗って分配を持ちかけ、個人・金融情報や金銭を狙う手口が紹介されています。「自分にも取り分がある」という説明を、受け取れる証拠と取り違えないでください。
ATMカードなら税金を避けられるという説明
メールはATMカードを使う理由として、高額な国際送金の税負担を避けるという趣旨の説明をしています。カードで受け取るという方法だけで、税務上の扱いや資金の正当性が保証されるものではありません。この説明を裏付けのある節税方法として受け取らないでください。
受取方法が銀行振込、ATMカード、暗号資産に変わっても、知らない資金の権利者に仕立てる話の問題は同じです。金額や国名、送信者名が変わっても、この流れを見分けることが役立ちます。
リンクがなくても、返信そのものが誘導になる
不審メールというと偽サイトのURLを探しがちですが、この例は本文の末尾で氏名、住所、電話番号を尋ねています。サイトを開かせず、メールの返事で情報を集める形です。
返信すれば、使われているメールアドレスであり、その話題に反応する相手だと伝わります。会社の署名を自動で付けて返信すると、勤務先、役職、電話番号なども追加で知らせることになります。「お断りします」「本当に私宛てですか」と確認するための返信も避けてください。
件名に「RE:」が付いていても、自分の送信履歴に該当するやり取りがなければ、その表記だけで知人からの返事とは判断しません。相手の名前を検索して同名の弁護士が見つかっても、実在人物の名前が使われている可能性があるため、同一人物と結び付けないことも重要です。
遺産・ATMカードの勧誘メールに返信してしまったとき
この節は、本文で紹介した弁護士を名乗る相手に返信したり、資金の受取手続きとして個人情報を送ったりした場合の対処です。家族や自分で選んだ専門家へ相談したこととは区別してください。相手とのやり取りを止めたうえで、返信文だけなのか、住所・身分証・金融情報まで渡したのかを整理します。
| 渡したもの・行ったこと | 優先する対応 |
|---|---|
| 返事をしただけ | やり取りを打ち切ります。別の弁護士や配送担当者を名乗る追加連絡にも応じません。 |
| 氏名・住所・電話番号 | これ以上の情報を渡さず、送った内容を記録します。その情報を引用する電話やメールが来ても、本人確認の証拠として信用しません。 |
| 身分証明書の画像 | 送信した書類と画像の範囲を整理し、警察や発行元の相談窓口へ対応を確認します。相手に削除証明を求めて会話を続けないでください。 |
| 口座の認証情報・カード情報 | 銀行やカード会社の公式窓口へ急いで連絡します。口座番号だけか、暗証番号や認証コードも送ったかを分けて説明します。 |
| 送金した | 振込先、金額、時刻、やり取りを保存し、利用した金融機関と警察に相談します。返金のためという追加送金には応じません。 |
被害金を取り戻すと称する別の人物から連絡が来ても、その相手をメール送信者が紹介した場合は特に注意してください。返金の成功を保証し、前払いの費用を要求する話に乗ると、損失が重なるおそれがあります。
相談先に迷う場合は消費者ホットライン188が入口になります。メールや送金記録を消す前に、相談に必要な証拠を手元へ残してください。個人情報を含む全文をSNSに公開して助けを求めるのは避けます。
よくある疑問
無料で受け取れるなら、返事だけしてもよいですか?
おすすめできません。この文面では、金銭より先に本人情報を求めています。「無料」という約束と、情報を渡す危険性は別です。受け取る義務も、相手に事情を説明する義務もありません。
法律事務所の書類を見せてもらえば分かりますか?
見知らぬ相手に追加資料を要求するための返信は避けてください。もっともらしい証明書や印章が送られても、それだけでは確認になりません。実際の相続に関わる心当たりがある場合は、家族や別経路の専門家から確認します。
このメールが届いたのは、個人情報が漏れたからですか?
受信した事実だけでは、漏えいの有無や入手経路は分かりません。公開されている連絡先に送られる場合もあります。まずは返信と情報提供を避け、同じ話を持ちかける追加連絡をまとめて迷惑メールとして扱います。
まとめ:資金の受取話より、何を要求されているかを見る
弁護士、故人、宣誓供述書、ATMカードといった言葉で手続きを本物らしく見せても、肝心なのは受信者に何をさせようとしているかです。この例では、心当たりのない資金の受取人になるために氏名・住所・電話番号の返信を求めています。返事をせず、送ってしまった場合は情報の種類に応じて相談してください。
超解決 第一編集部
疑問解決ポータル「超解決」の編集チーム。正確な検証と、現場視点での伝わりやすい解説を心がけています。
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