Windows Updateを適用した翌日から、複合機でスキャンして共有フォルダに保存するScan to SMB機能が「認証失敗」や「アクセス拒否」といったエラーで使えなくなることがあります。これはWindows側のセキュリティ強化によりSMB(Server Message Block)プロトコルの動作が変わったことが主な原因です。特に2022年前後からMicrosoftが古いSMBバージョンの無効化や署名の必須化を進めた影響で、複合機とPCの設定が合わなくなるとこの問題が発生します。本記事では、まずトラブルの切り分け方を整理し、その上でWindowsのSMB関連設定を確認・修正する手順を具体的に説明します。複合機やネットワークの管理者権限が必要な作業についても、何をいつ依頼すべきか判断できるようにまとめました。
【要点】この記事で確認すること
- 最初に見る場所: 複合機のエラーコードと、Windowsのイベントビューアー(システムログ、SMBクライアント関連)
- 切り分けの軸: 複合機のSMB設定とWindowsのSMBバージョン・署名の一致、ネットワーク到達性、共有フォルダのアクセス権
- 注意点: Windowsのレジストリ変更は管理者権限が必要で、誤った変更はシステム不安定につながります。必ず事前にバックアップを取り、所属組織のIT部門に相談してから行ってください。
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目次
Windows Update後にScan to SMBが失敗する仕組みと原因
なぜSMB認証が通らなくなるのか
Scan to SMBは、複合機がネットワーク上のWindows PCやファイルサーバーにスキャンデータを書き込む仕組みです。この通信にはSMBプロトコルが使われています。Windows Updateで適用されるセキュリティ更新プログラムは、古い脆弱性のあるSMBバージョン(SMB 1.0)の無効化や、メッセージ署名(SMB Signing)の必須化を段階的に進めています。複合機側が古いSMBバージョンしかサポートしていなかったり、署名に対応していなかったりすると、Windows側が接続を拒否して認証エラーになります。また、Windowsのクレデンシャルマネージャーに保存された認証情報が更新プログラムにより破棄されることもあります。
影響を受けるWindowsバージョンと更新プログラム
この問題はWindows 10(バージョン1809以降)やWindows 11で多く報告されています。特に2022年9月の累積更新プログラム(KB5017308など)以降、SMB署名の既定動作が変更されました。また、Windows Server 2019/2022でも同様の現象が発生します。ただし、更新プログラムの番号や影響の有無は環境によって異なるため、まずは「コントロール パネル」の「プログラムと機能」→「インストールされた更新プログラム」で最近の更新プログラムを日付順に確認してください。特定のKB番号が原因と決めつけず、SMB設定そのものを確認することが重要です。
トラブル切り分けの最初の3ステップ
ステップ1:複合機のIPアドレスとPCの到達性確認
- 複合機の操作パネルでIPアドレスを確認してください(通常はネットワーク設定画面にあります)。
- Windowsのコマンドプロンプトを管理者として開き、「ping <複合機のIPアドレス>」を実行して応答があるか確認します。
- Pingが通らない場合は、複合機とPC間のネットワークケーブルやWi-Fi接続、スイッチなどを確認してください。同じセグメントにある別のPCからもpingを試すと切り分けが容易です。
- Pingが通るのに認証に失敗する場合、SMBプロトコル自体の問題が疑われます。
ステップ2:他のPCで同じ設定が使えるか確認
- 問題が発生していない別のWindows PC(同じネットワークに接続されたもの)を探します。
- そのPCで複合機のScan to SMBの送信先フォルダを一時的に設定し、実際にスキャンが成功するかテストします。
- 成功する場合は、複合機やネットワークの問題ではなく、最初のPCのSMB設定に問題があると判断できます。
- 失敗する場合は、複合機側の設定(SMBバージョンや認証方法)に原因がある可能性が高いです。
ステップ3:スキャン先フォルダの共有設定確認
- スキャンデータを保存するフォルダー(例:C:\Scans)を右クリックし、「プロパティ」→「共有」タブを開きます。
- 「共有」ボタンをクリックし、アクセス権を確認します。「Everyone」や複合機が使用するユーザーアカウントに「読み取り/書き込み」権限が付与されている必要があります。
- また、セキュリティタブのNTFSアクセス許可でも、同じアカウントに「変更」権限が付与されているか確認してください。
- 複合機が使用するユーザーアカウントが不明な場合は、複合機の送信設定で指定しているユーザー名とパスワードを確認してください。
- 注意:ドメイン環境では、複合機が共有フォルダにアクセスするためにドメインアカウントを使用することが多いです。その場合はActive Directoryのユーザーアカウントのパスワードが変更されていないか、アカウントがロックされていないかも確認してください。
SMB設定を確認する具体的な手順
SMB 1.0/CIFSファイル共有のサポートの確認
- コントロールパネルを開き、「プログラムと機能」を選択します。
- 左側の「Windowsの機能の有効化または無効化」をクリックします。
- 一覧から「SMB 1.0/CIFSファイル共有のサポート」を見つけます。チェックが入っているか確認してください。
- チェックが入っている場合は、それを外して再起動することで問題が改善する可能性があります(多くの複合機はSMB 2.0以上をサポートしています)。ただし、古い複合機ではSMB 1.0が必要な場合もあるため、複合機のマニュアルで対応SMBバージョンを確認してください。
- チェックが入っていない場合、逆にSMB 1.0を有効にすることで解決することもあります。ただし、セキュリティリスクが高いため、IT部門の許可を得てから行ってください。
SMB署名(SMB Signing)の設定確認
- Windowsキー+Rキーで「ファイル名を指定して実行」を開き、「secpol.msc」と入力してEnterキーを押します(ローカルセキュリティポリシー)。
- 左側のツリーから「セキュリティの設定」→「ローカル ポリシー」→「セキュリティ オプション」を展開します。
- 右側の一覧から「Microsoft ネットワーク サーバー: デジタル署名 (通信) を常時行う」と「Microsoft ネットワーク クライアント: デジタル署名 (通信) を常時行う」の2つのポリシーを探します。
- これらのポリシーが「有効」になっている場合、複合機がSMB署名に対応していないと接続できません。一時的に「無効」に変更して動作を確認することも可能ですが、セキュリティが低下するため恒久的な変更は推奨しません。
- 複合機がSMB署名に対応している場合は、複合機側でも署名を有効に設定してください。対応していない場合は、複合機のファームウェアアップデートを検討するか、やむを得ずWindows側の署名要求を無効にするか、IT部門と相談してください。
最小SMBバージョンと最大SMBバージョンの確認(レジストリ)
- Windowsキー+Rキーで「ファイル名を指定して実行」を開き、「regedit」と入力してEnterキーを押します(レジストリエディター)。
- 以下のキーに移動します:HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\LanmanServer\Parameters
- 右側の一覧で「SMB1」、「SMB2」、「MinSMBVersion」、「MaxSMBVersion」などのエントリを確認します。存在しない場合は既定値が使用されています。
- 注意:レジストリの変更は慎重に行ってください。特に「MinSMBVersion」を2に設定すると、SMB 1.0が強制的に無効になります。複合機がSMB 1.0しかサポートしていない場合は接続できなくなります。
- 同様にクライアント側のレジストリも確認します:HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\LanmanWorkstation\Parameters
複合機側の設定確認ポイント(管理者向け情報)
複合機の管理者またはそれに準じる権限がある場合は、複合機のネットワーク設定メニューで以下の項目を確認してください。
- SMBプロトコルバージョン: 複合機がSMB 1.0、2.0、2.1、3.0のどのバージョンをサポートしているか、および通信時に使用するバージョンの設定(自動、SMB 1.0のみ、SMB 2.0のみなど)。可能であればSMB 2.0以上に固定してください。
- 認証方式: NTLMv2またはKerberosが使用できるか。Windowsのセキュリティ設定によってはNTLMv1が拒否されます。
- SMB署名(Signing): 複合機がSMB署名に対応している場合、有効にしてください。対応していない場合はWindows側の署名要求を緩和する必要があります。
- ワークグループ/ドメイン: 複合機が参加しているワークグループまたはドメインが、スキャン先のPCと同じか確認してください。ドメイン環境では複合機をドメインに参加させる必要がある場合があります。
- 送信先フォルダのパス: UNCパス(例:\\PC名\共有フォルダ)が正しいか、スペルミスがないか確認してください。
- ユーザー名とパスワード: 複合機に保存されている認証情報が、スキャン先PCのローカルアカウントまたはドメインアカウントとして有効か確認してください。パスワードが変更されていると認証に失敗します。
失敗パターンと判断基準
| エラーメッセージ/現象 | 主な原因 | 確認すべき箇所 |
|---|---|---|
| 「認証に失敗しました」または「アクセスが拒否されました」 | 複合機のユーザー名/パスワードが間違っている、またはアカウントがロックされている | 複合機の送信設定、Windowsのユーザーアカウント状態 |
| 「サーバーが見つかりません」 | PC名やIPアドレスが変更された、またはネットワークに到達できない | 複合機の宛先設定、pingテスト |
| 「共有フォルダにアクセスできません」 | 共有フォルダのアクセス権限が不足、またはフォルダが存在しない | Windowsの共有設定、NTFSアクセス許可 |
| 「プロトコルエラー」または「SMBエラー」 | SMBバージョンの不一致、またはSMB署名の要求が一致しない | WindowsのSMB機能、セキュリティポリシー、複合機のSMB設定 |
| スキャンは成功したがファイルが0バイト | 書き込み権限がない、またはディスク空き容量不足 | 共有フォルダのNTFS権限、ディスク容量 |
再発防止策と管理者への依頼事項
同様の問題が将来のWindows Updateでも発生する可能性があります。以下の対策を検討し、必要に応じてIT管理者に依頼してください。
- グループポリシーでSMB設定を固定する: 組織全体でSMBバージョンや署名の設定を統一することで、個々のPCで設定が異なることを防げます。ただし、複合機との互換性を考慮した設定にする必要があります。
- WSUSや更新プログラムの管理: 更新プログラムの展開をテスト環境で事前に検証し、問題がなければ本番環境に展開するプロセスを導入してください。
- 複合機のファームウェアアップデート: 複合機メーカーがSMBの互換性向上のためのアップデートをリリースしている場合があります。複合機の管理画面からファームウェアバージョンを確認し、最新版に更新してください。
- 代替プロトコルの検討: どうしてもSMBで問題が解決しない場合は、FTPやSMTP(メール送信)など別のプロトコルでスキャンデータを転送することも選択肢として検討してください。
まとめ
Windows Update後に複合機のScan to SMBが認証失敗する問題は、SMBプロトコルのバージョンや署名設定の不一致が原因であることが大半です。まずは複合機とPC間のネットワーク到達性と共有フォルダのアクセス権を確認し、次にWindowsのSMB関連機能やセキュリティポリシーを調べてください。レジストリ変更が必要な場合は必ず管理者に相談し、バックアップを取ってから行ってください。複合機側の設定も合わせて見直すことで、多くのケースで問題を解決できます。この記事の手順に沿って切り分けを進め、再発防止策を講じることで、安定したスキャン環境を維持してください。
超解決 第一編集部
疑問解決ポータル「超解決」の編集チーム。正確な検証と、現場視点での伝わりやすい解説を心がけています。
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